Patriot’s  “ロングゲインだけはダメよ” Defense” 、或いは”Semi Prevent Defense”

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”喪失のペースをコントロールする”

ディフェンスの ”Principle” を規定するチーム事情

NFL随一の得点能力を誇るオフェンスを持つ

  1. スプレッド体型から早いタイミングで4~5のターゲットに投げ分けるパス
  2. Iフォーメーションからのパワーラン

異なったスタイルの攻撃シリーズをそれぞれ高いレベルで運営し、

  • どのフィールドポジションからでも
  • どんなスタイルのディフェンスからでも
  • どの時間帯からでも

ボールを前進させ、得点を奪うことができます。つまり

オフェンスの得点能力が高度に安定しています。

なのでディフェンスにはゲーム終了時点で相手チームの得点が自軍の得点を下回るように持っていくことを最終的な目標とし、そのために喪失(失点)そのものを阻止することよりは、むしろ喪失(失点)のペースを自軍のオフェンスが得点するペースよりも遅らせることに主眼が置かれています。

望ましいこと(ロングゲインの発生頻度が少ない)と、それほど望ましくないわけでもないこと(1プレイ毎にズルズルと進まれる)をトレードする

上は Patriots ディフェンスのベーシックアライメントです。

第一防衛ラインに対する、第二、第三防衛ラインの設定位置が深くかつ厚いことが分かります。

この陣容からは、

  • まず第三防衛ラインを守ることに優先順位が置かれている
  • 守備の優先順位はその手前→更にその手前へと設定されている
  • 第一防衛ラインでボールを阻止することよりは、むしろそこが破られたあとの穴埋めのし易さを優先している

ことが読み取れます。

私はこの守り方はほぼ Prevent Defense と考えてもそれほど間違ってないと思います。

Patriots はこのアライメントから

  • 1プレイあたりの平均喪失ヤードが高くなることは受け入れる
  • その代わり大量失点の原因となりやすい、短時間にロングゲインが頻発する事態を回避する

ことで自チームの喪失(失点)のペースを、自分たちが考える望ましい水準にコントロールしています。

”ロングゲインだけはダメよ”

  • 第三防衛ラインが深くかつ厚くい
  • 第三防衛ライン~第二防衛ライン間に更にディフェンダーを追加
  • 第二防衛ラインより前はガラガラ

このアサイメントの意図するところは、オフェンスに最奥へとボールを運ぶことを諦めさせボールの運び先をその手前、手前へと誘導することにあります。こうやって相手オフェンスの前身のペースを遅らせれば

  • 相手チームの得点ペースが自軍の得点ペースを上回ることは困難になる

だろうし、

  • こんなペースでプレイを繰り返していれば、オフェンスが先にやらかすだろう

というのが Patriots の考えのようです。

カバー優位/スキーム優位のディフェンス仕様

  • パスラッシュの強化よりはカバーを厚くする方を重視する
  • 優れた一選手によるハイパフォーマンスに頼るよりは11人の選手全員で ”productivity” 生産性を上げることを重視しています。

意図をもったプレイ/コール

下のプレイは #98 Trey Flowers (当時ルーキー)によるパスカバーです。

このプレイから分かるのは

  1. Ptriots事前のスカウティングに基づき相手チームのプレイコールを予測し、そのコールの意図を潰す明確な目的をもってディフェンスプレイを選択している
  2. 選手ひとりひとりに相手の出方を教え、それに対するチームの対策/各選手のアサイメントを徹底している。各ディフェンスプレイの精度が極めて高い

ことです。Patriots のディフェンスを観ていると、彼らが

  • とにかくロングゲインだけは避けにいってるのか
  • 相手のドライブを断ち切りに来てるのか

その意図するところを明確に読むことができます。意図が明確に読めるのは、彼らがやろうとしていることが上手くいっているからです。逆に何をやっても上手くいかないディフェンスからは、彼らが何をしようとしているのかを読み取ることは困難です。

まとめ

  • Patriots はオフェンスが驚異的な得点力を持つことを根拠として失点そのものを阻止することよりも、失点するペースを下げること(ロングゲインの発生を避ける)を優先している
  • 優れた一個人に頼るよりも、ディフェンスチーム全員での息の合った動きを重視している
  • 優れたスカウティング/コーチングにより、高いレベルのディフェンスプレイを適切なタイミングでコールしている

Patriots のディフェンスは、ぼんやりと観てるとズルズルと後退を繰り返していて、例えば Broncos のディフェンスと比べると締まりがないように思えます。

でも彼らのしてること/しようとしてることは、このチームの実現したがってるシナリオ(オフェンスが大量得点しディフェンスには失点をそれ以下に抑えることを期待する)を知ったうえで観ると明らかです。

彼らのディフェンスの本領は、ここにあります。

 

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

シリーズ:アメフットにおけるディフェンスの2大潮流 ブロンコス型とペイトリオッツ型について(全5回)

  1. アメフットにおけるディフェンスの2大潮流 ブロンコス型とペイトリオッツ型について(序)

  2. ディフェンスにおけるリスクとリターンのトレードオフ

  3. Bronco’s ”殺られる前に殺れ” Defense 、或いは”semi Goalline defense”

  4. Patriot’s  “ロングゲインだけはダメよ” Defense” 、或いは”Semi Prevent Defense”

  5. ”不幸なDはお互いよく似た特徴により不幸だが、幸福なDは其々の特徴により幸福である”

 

 

 

 

 

 

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